
lost ancient Tibetan buddhism paintings
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西チベット、ヒマラヤの峰々に囲まれた厳しい大地に、今から約1000年前、素晴らしい仏教美術が栄えて
いました。カシミール様式と呼ばれるその美術の伝統は、残念ながら途絶えてしまい、今では古寺にわずかに
その名残をとどめるのみです。現在までの数百年、この伝統に基づく絵師は一人としてしいませんでした。
私は、この伝統を数百年の時をこえて復活させるべく取り組んでおり、この試みによって誕生した絵画を、
「アルチ・カシミール様式」と名付けました。アルチとは、カシミール様式絵画を残す代表的な寺院の名称です。
また、現在まで続くチベットの代表的な絵画様式である「メンリ様式」の絵画の制作や、日本画の技法・
画材を用いた作品の制作にも取り組んでいます。
※カシミール様式とは
長い歴史を誇るチベット仏教美術のうちでも、最も古い美術様式と言えるのが、この「カシミール様式」です。10世紀ごろ、西チベット地方では積極的に仏教を取り入れ、その隆盛に務めていました。美術の面においては、
西に隣接していたカシミールの影響を色濃くうけていることから、この当時の仏教美術を「カシミール様式」と
呼ぶようになりました。別名として、当時の国名からとった「グゲ様式」、また当時カシミールに留学し、
西チベットの仏教の隆盛を主導したした僧の名をとって「リンチェンサンポ様式」とも呼ばれることがあります。
カシミール様式は、古代インド仏教美術の影響のみならず、当時カシミールから画工を招いて描かせたという
伝承が示すように、ペルシャやさらに西域の文化の影響を受けています。西チベット地域のみで用いられ、
時代も10世紀~12世紀ごろに限られます。
その後、15~16世紀にカシミール様式の絵画を復興する運動がおこります。「グゲ様式」などと呼ばれる
ことのあるこの様式は、カシミール様式をベースにしながらも、中国の絵画の影響を取り入れたものとなって
います。現在も残るグゲの王宮などには、この様式による壮麗な壁画が残されています。しかし、この運動も
長く続くことはなく,カシミール様式の絵画が描かれることはなくなってしまいました。
カシミール様式の絵画の具体的な特徴についてですが、尊像については、人体の隈取り、細く長い目
(瞳は小さく点状、横顔の場合顔からはみ出す表現)、くびれた腰など細い体、などがあげられます。また
背景は青が主で、風景などはほとんど描かれない点も挙げることができます。
現在までカシミール様式の絵画を残している代表的な寺院には、アルチ・チョスコルゴンパ、マンギュゴンパ、スムダチュンゴンパ(以上ラダック)、ピャン・トンガ石窟群(ガリ)などがあります。
※アルチ・カシミール様式の技法について
以上の通り、カシミール様式の伝統は途絶えていますので、その技法については新たに考えなくては
なりません。そこで、現在まで続いているチベット絵画様式(メンリ様式)をベースにすることにしました。
度量法(尊像の身体各部の比率の決まり)を定め、尊像の描き方の統一した基準があるのが大きな特徴です。
そこで、アルチ・カシミール様式では、この度量法をベースとし、古寺の壁画の図像を参考に、
カシミール様式の特徴を加えていくという方法をとっています。この手法により、印相・持物などは現在の
なじみのある尊格の姿をとりつつ(壁画では、現在ではなじみのない仏典に基づいて描かれている場合もあり、
この場合、尊格の比定が難しくなります)、カシミール様式の持つ独特の美しさを表現することができると
考えています。







